「子どもの遊びは生きる力のもと!」西野博之氏講演会 2015.1.25さくら会館

西野博之さんは、長年、個人でフリースペースを運営し(たいへんなご苦労をし、また楽しく感動的なお話は著書「居場所の力」で)今は、川崎市子ども夢パークの所長です。講演会では、スライドで西野さんの関わっている子どもたちの生き生きした写真を見ながらお話を聞きました。いま、子どもたちの不登校やひきこもり、いじめなどが問題になっています。なぜ?どうしたらよいの?そんな疑問に、そうか!と思えるお話でした。

<講演会概要>
いま、子どもたちは、多くのストレスをため込んでいる。
不登校の小中学校生は全国で12万人。ひきこもり、暴力行為、いじめ。
小中高生の自死・・年間320人。
20代~30代の若者の死因1位が自死である。こんな国は世界に他にはない。

 子どもたちは、安全のために禁止がいっぱいの環境に置かれており、失敗から学ぶという経験ができないでいる。子どもは自信を持てず、自尊感情、自己肯定感も低くなる。自分の居場所を持てず、夢を描くこともできず、夢を持てても、失ってしまう社会である。

 川崎市が、1998年から行った「川崎市子ども権利条例」づくりに、調査研究委員会の世話人として関わる。この条例は、「子どもは、おとなとともに社会をつくるパートナー」と位置づけ、行政、市民、子どもが一緒に、2年間に200回の会議をおこない、200012月議会で満場一致で採択された。

〈子どもの権利に関する条例27条〉
子どもにはありのままの自分でいること、休息して自分を取り戻すこと、自由に遊び、もしくは活動すること、または安心して人間関係をつくり合うことができる場所(以下、居場所とする)が大切であることを考慮し、市は居場所についての考え方の普及ならびに居場所の確保、およびその存続に務めることとする。

  この条例が「子ども夢パーク」をつくるための法的な根拠となり、2003年に実現した。昨年度来場者数9万3千人、10年間で70万人を突破している。

 子ども夢パークは、プレイパーク、フリースペースの二つの機能を持っている。

 *プレイパーク*
昔の子どもはお買い物など、お手伝いをすることで自分が役に立っているということを実感し、暮らしの中で自尊感情が自然に育っていた。本来子どもは何でもやりたがるが、おとなの都合で邪魔にしたり、やらせなかったりすると、やらない子に育っていく。

失敗から学ぶことがたくさんある。やらされることより、自分で覚悟してやってみることが大切で、結果として自信につながる。自信をつけるためには、「出来たという体験」・「失敗しても超えていこうとする力」・「あきらめるという判断をする力」の3つが必要。この力を手に入れることで、打たれ強くなる。

プレイパークは「ケガと弁当自分持ち」。自分の責任で自由に遊んだり活動したりできる場所だ。もちろんケガもおきるが11年間に訴訟は1度もない。失敗を重ねながら「できた!」を体験し、「自分ってすごい!」と感じられる。

 遊具も全て子どもたちの手作り。ボランティアの大工さんらから、きちんと技術を学び作り上げてきた。材料は廃材を使い、水は井戸水で、排水も浸透マスを使っている。水を使いたいだけ使って泥だらけになって遊べる。火起こしに挑戦した3年生の男の子は3時間かけ、できなくてがっかりして帰った。悔しい気持ちと、何でできないのかと考える二つの気持ちを持ち帰った。それが次につながっていく。

遊びを通して情動を手に入れる。このような体験ができるかどうかで思春期に差が出てくる。

最大のイベントである「子ども夢横丁」は全て子どもたちのアイディアと手作りだ。廃材で色々なお店を作り、自分たちで運営する。食品を販売する子どもたちは、衛生管理、アレルギー成分表示等をきちんと学んでいる。値段は上限70円。横丁税も徴収し運営する。おこづかいのない子は、アルバイトで金券をもらって参加した。140人で33店舗の出店。お客さんは2500人。おとなも子どもも一緒に盛り上がった。子どものもつ力のすごさに感動する。

*フリースペース えん*
貧困の問題から、お金がないとフリースクールにも通えない。また、あらゆる障がい、非行の子どももOKという場所がなかったことを考えて作った。今は100人くらいが登録。
学校に戻すことは目的ではなく結果。大切なのは自己肯定感を持たせること。

暮らしを大切にした日常、毎日のお昼ご飯を作って食べる。30~40人分を作ってくれた人たちに「ありがとう」という気持ち。一緒に食べることで一人じゃないことを感じ、元気を取り戻していく。

ここでは、まったりと過ごす時間がある。心のバランスをとる、「子どもの時間を取り戻す場所」、何もしないということを保障、自分でやる事を決めることができる場所。

色々な人がボランティアで関わっている。ボランティア講師で、楽器やダンスを教えてくれる人、理科の実験をしてくれる人、アート、染め物、お菓子作り。「たった1人の誰か」と出会うことで、目標や夢を持つことができた子どももいる。学校の先生が1年間派遣研修することもある。その関わりで学校に戻った子もいる。地域から80人ものボランティアさんが参加してくれている。

ペンキ塗りなどは、多動の子にとってとても嬉しい体験ができる。人類は元々みんな注意欠陥・多動だった。おとなが、発達障がいの子に対して、この子と一緒にいるのはどうやったら楽しくなるのかを考えていく。この子がいて当たり前という社会であること。導くよりも寄り添うこと。規制の制度や仕組みの枠からこぼれ落ちる子ども。若者たちがいる。むりやり合わせるのではなく、子ども・若者の「いのち」の方へ制度や仕組みを引き寄せていくことがミッションである。

〈最後に〉ドイツ 子ども権利条例の制定記念、大人への報告集会にて
~子どもからおとなへ~
 まず、おとなが幸せでいてください。おとなが幸せでないのに子どもだけ幸せになれません。おとなが幸せでないと、虐待とか体罰が起きます。条例に、子どもは愛情を持って育まれるとありますが、まず家庭や学校、地域の中でおとなが幸せでいてほしいのです。子どもはそういう中で安心して生きることができます。
                   川崎市は母子手帳にこの言葉を載せています。

< 参加者の感想より>
●「子どもを真ん中におく」ということを忘れてはいけないですね。改めて思い出させてもらいました。

●子どもの権利について西野さんのお話を伺うことができたことに感謝します。保育の仕事をしているので、今のこどもを取り巻く社会の環境の息苦しさに疑問を感じておりました。この社会の中で、どう子どもを育てていくべきか、実際に子どもと関わり続けている西野の先生のお話は感動的であり、これから子どもと関わる上での貴重なものとなりました。

●何もしないを保証、無駄な時間が大切は耳が痛かった。ケガは自己責任というのは、私は抵抗があったが、最後説明を聞けて良かった。フォローは大事ですね。

●今日はありがとうございました。生まれてきてくれてありがとう。子どもへのメッセージは心から本当にシンプルなのだと思いました。

●自分が今、まさしく悩んでいた事の答えの1つをいただき、驚くとともにとてもよかったと思っています。ありがとうございました。

●とても貴重なお話ありがとうございました。子どもはきっと昔も今も変わっていない。環境と周りの大人とのかかわり方だなぁ~と思っています。子どもは社会の宝。我が子も含めて大切にしたいと改めて思いました。

●本当に子どもたちにとっても、大人にとっても生きにくい世の中になっていますね。子どもたちのためと言いながら、大人も元気でいなくては・・・泣かされました。遊び場だけでなく、やっぱり(子どもの権利の)条例も必要だと思いました。

●たくさんのお話が聞けて嬉しかったです。子どもに大切な事がどんなことかよくわかりました。

●先生の熱心なお話に感動しました。こんな取組みが川崎で行われているってことは、東京、福生でも挑戦できるんです!すごい!

●親の覚悟が必要だと思いました。

●学校での発表会で失敗しないよう無難にこなせる種目を私が選んで、ちがう種目を子どもが決めてきた時おこってしまって後悔したところです。もっと失敗させます。

●子どもの権利ってわかりにくいことがありますが、西野先生の子どもの世界感がわかると見えてくるものがあり、理解できます。とても感動しました。めんどうくさいかかわり方深くむずかしいと思いました。

●「子どもの権利条例」の制定から始まり、どの話も(いい意味で)ガツンと衝撃的な内容で、こんなにも丁寧に真剣に、こどもの幸せのために長年活動してこられた西野さんのお話に何度も涙が出ました。ここで育まれた幸せは子どもたちの一生の財産になるはずで、私もまわりの子どもたちのために何かできるか真剣に考えてやっていきたいと思いました。今この話が聞けて本当によかったです。ありがとうございました。

●とてもいいお話でした。自分の市でもプレイパークができるとよい。自分が子どものころに比べ、今の子どもの遊びが貧弱になっている。

●友人に誘われて来ましたが、とてもよかったです。福生にも居場所のない子どもたちがたくさんいます。その子どもたちにもフリースペースのような場所があればよいのにと思っています。先月、プレイパーク福生(子どもの遊びを考える会の一日プレイパーク)行ってきました。常設であればよいです。福生の人もいましたが、羽村あきる野などの人も多かったので、もっと福生の人にたくさん知ってほしい。子ども権利条例を福生でぜひつくってほしいです。子どもたちと協力したいです。

●子どもの本来持つ力をもって信じていいのですね。子どもたちが、主体的で実践的な経験を積む機会が減っている現状を認識し、大人が意識的につくっていく必要をさらに感じました。親密になるには「胃袋をつかむ」というのは、なるぼど!と思いました。