子どもたちにとって”学び場”とは

4/18(土)生活クラブ東京の生活クラブ館で開催された「ピアふぇすた2026」にオンライン参加しました。

テーマは“子どもたちにとって「学校」とは~公教育の「今」と、多様な学び場~”。

第一部は元文部科学事務次官の前川喜平氏の講演でした。
“公教育と政治の「今」を問う~子どもたちはなぜ「学校」に行けないのか~”と題し、不登校の広がりを切り口とし、権利や制度としての公教育がどう変わってきたのか、そしてどう変わっていくのかについてのお話でした。

【子どもは幸せではない?】令和7年度の自殺者数は警察庁の発表によると、全体の数は微減して2万人を切ったにもかかわらず、小中高生の自殺者数は最多を更新し、538人となりました。自殺の理由の最多は「学校問題」、2番目には健康問題(うつなど)が挙げられていますが、うつも学校が起因であることも多いということです。

ユニセフ・イノチェンティ研究所の「子どものウェルビーイング(幸福度)調査」では、分野ごとに分析すると、日本の子どもの身体的健康は1位でありながら、精神的幸福度は先進国 38 か国中37位という結果であることが分かりました。日本の子どもを取り巻く環境は厳しさを増しているように感じられます。

【不登校の数は50万人?】文部科学省の定義において、不登校とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除く」とされています。現在不登校の子どもの数は35万人超と発表されていますが(こども家庭庁)、前川さんによると、実際は健康の理由や学校に行かない選択をしている子どもなどを合算すると、学校に行っていない子どもは50万人を超えているとのことでした。

【ゆとり教育は失敗?】2001年~2011年度にかけて実施された、いわゆる「ゆとり教育」は、知識の詰め込みは本当の学力につながらないとして、自ら学び、考える子どもを育てようという方針でした。学力調査による学力低下説などにより、ゆとり教育は大きく転換することとなりましたが、ゆとり教育が終了した2012年において、不登校の人数は過去25年で最も少ない11万3千人でした。「考える主権者」が生まれることへの政治家の忌避感がゆとり教育を終了させたのではと前川さんは考えます。

【教育基本法の改正】2006年、第二次安部政権によって教育基本法の改正が行われました。改正案には、「わが国と郷土を愛する態度を養う」という愛国心を巡る表現や、「学校では規律を重んじる」と言った条文が盛り込まれ、学校は国家のためにあるという方針を強く打ち出しました。第二次安部政権以降、「個人よりも国家が大切」であるという思想が強まり、よき兵隊をつくるための学校になっていないか、学校が軍隊化しているのではないかと前川さんは危惧しています。確かに我が子が通う中学校でも、「規則を守る子はいい子、守らない子は悪い子」といった「ゼロトレランス(※)」指導が強くなっているように感じます。

(※) ゼロトレランス…わずかな規律違反や不具合も見逃さず、厳格にペナルティを適用して秩序を維持する「無寛容・非寛容」の方針

第二部のパネルディスカッションは、地域で学び場・居場所を提供している3団体が登壇しました。
・大田区 「Musub.i.me(むすびめ)」
・清瀬市 「フリースクール★これまな」
・練馬区 「みんなの居場所~にじまちプレイス~」
コーディネーターは東京・生活者ネットワークの岩永やす代都議で、初めに東京都の子ども施策と不登校支援についての発表がありました。東京都では2021年に4月に東京都こども基本条例を制定し、子どもの声を聴く、子どもの目線に立って考えていく事を第一に子ども政策に取り組んでいます。フリースクールへの支援や、利用者に対する支援などの多様な学び場への支援を拡げています。こうした支援は充実させていく必要がありますが、同時になぜ学校に行けないのかも考えていく必要があるとのことでした。またトーヨコキッズと称される居場所のない子ども達がいることについても、地域の居場所が重要で、地域の居場所づくりの予算計上も進めていくということでした。

参加した団体は、それぞれ我が子の不登校をきっかけに多様な学び場をつくり、助成金の支援を受けながら実践を続けています。居場所やご飯の提供、大人向けの勉強会などの情報発信、交流の場など事業内容は多岐にわたります。

課題として挙げられていたことは、
★教育委員会でさえ不登校への理解が乏しいこと。
地域でも「学校に行かない選択肢」は理解されにくい状況。
子どもたちや保護者が悩まなくてよい事で苦しみ、自己肯定感を失い続けている。
★フリースクールや居場所の存在は知られてきたが、あくまでも「何かあってから」の選択肢に過ぎないこと。
といった、行政や地域の「不登校」に対する理解不足が根強いことでした。
学校以外への学びへの理解と、子どもの権利への認識が社会全体に広がること、そして最初からフラットに多様な教育の選択肢がある社会になることが団体としての願いだということでした。
居場所は確実に作られているけれども、まだまだつながれない親子はたくさんいて、もっと知られていく必要があります。

大人の中には、多様な学び場や子どもたちにとって居心地のいい場所をつくると、子どもたちが学校に来なくなるのではと考える人も多くいます。子どもたちの悩みを真摯に受け止め、大人が変わっていかなければならないと強く感じた講演でした。(会員:スエナガ)

 

主催は生活クラブ社会的連帯経済コネクト機構、生活クラブ運動グループ各団体が持つ機能をつなぎ、発揮され推進する役割を担っている団体。ワーカーズ・コレクティブをはじめ非営利組織への支援および労働者協同組合の設立支援により、地域社会を豊かにするしごとの創出(働く場づくり)をすすめ、お互いに支えあい、たすけあって生きる地域づくりを目的としています。