「子どもが自分と他者を尊重しながら生きていく学びを」

2026年9月8日(土)、生活クラブ館で開催された学習会「子どもが自分と他者を尊重しながら生きていく学びを~私たちが今できること~」にオンライン参加しました。
(主催:生活クラブ東京 地域福祉政策委員会)
●みたかこどもアドボカシーの鶴田さん、竹厚さん
●認定NPO法人チャイルドライン支援センターの小松さん
3名の講師からお話を伺いました。
<みたかこどもアドボカシー>
みたかこどもアドボカシーは東京都三鷹市を拠点に、子どもやティーンズを対象とした包括的性教育や子どもの権利を守る活動を行っている市民活動団体です。アドボカシー(advocacy)とは「意見表明の支援や擁護、代弁すること」、権利を侵害されている人のために声を上げることを意味します。みたかこどもアドボカシーでは年間を通して「こころとからだの教室」を定期開催したり、子どもだけでなく、大人に向けての性教育の講義を行ったりしています。まずは包括的性教育とはどのような教育なのか、また子どもたちを取り巻く情報環境や性に関する現代の課題についてお話しいただきました。
現状として、若年層の4人に1人が性被害にあったことがあるといったデータや、情報ツールを用いた性暴力の増加、また、加害者との関係は全く知らない人よりも通学先の関係者が最も多いことなど、若者を取り巻く実態が挙げられました。性犯罪は性欲が原因で、衝動的なものと考えられがちですが、交番の目の前で性被害が起こることはないように、計画的なものであることの方が多いというお話が印象に残りました。性欲よりも「支配欲」が危険というお話もあり、学校の中での性被害が多いのは、学校教育の中で子どもの人権を軽視する土壌があるからではないのかと感じました。
また、性教育を早期に行うと、性衝動などを呼び起こすことになるのではという意見があります。しかし、性加害少年が有害な性情報へ最初に接触する平均年齢は6.5歳、性加害少年の最初の性問題行動を起こす平均年齢は9.6歳であるなど、まだ早いかなと思っているうちに子どもたちは性知識に触れているということになります。有害な情報に触れる前に正しい知識を得る事の方が重要であるというお話でした。
2023年度から文部科学省が推進している「生命(いのち)の安全教育」は、子どもが性暴力の被害者にも加害者にもならないための教育と位置づけ、全国の学校に教材を配布しています。しかし、文科省の調査によると「生命の安全教育の教材を活用している」と回答している学校は全体の14.8%にとどまるとされています。こうした教材も、すべての学校で活用されなければ、地域格差が生まれてしまいます。
包括的性教育とは、生きていくために必要な知識を学ぶことであり、それは、一度聞いて理解できるものではなく、その時の理解力や課題やタイミングで繰り返し学ぶことで「身につけていくもの」です。2027年の学習指導要領の改訂に向け、すべての子どもが学校で包括的性教育を学べるよう、国にきちんと働きかけていく必要があるというお話でした。
<チャイルドライン支援センター>
1998年、いじめによる子の自殺をきっかけに、世田谷で始動したチャイルドラインは、子どもの権利条約に基づき、子どもの「声」を受け止め、心の居場所をつくっています。また、受け止めた「声」を社会に発信し、子どもが生きやすい社会を目指し、活動しています。
チャイルドライン支援センターへ寄せられる相談事例を通じて、子どもたちが直面している人権課題や大人が果たすべき役割についてのお話でした。
毎年子どもの自殺者数が過去最多を更新している中、チャイルドラインには電話だけでなくチャットやつぶやきなど、毎日のように多くの子どもたちの声が届いています。自分自身のこと、学校のこと、家庭のことなど身の回りの関係との悩みに加え、思春期の体の変化、自分の性別への違和感、性被害・性加害に関する相談など性に関する悩みも多く寄せられています。
性に関する悩みについては、不確かな情報に振り回され、子どもたちは不安でいっぱいである様子が見て取れます。特にインターネットなどから得られる知識には間違ったものや過激なものがあふれており、性に関する知識不足が明らかな状況にあります。しかし、日本の性教育の現状として、教科書で「性交」は取り扱わないことや、避妊や人工妊娠中絶には触れないといった『はどめ規定』の影響があり、子どもの疑問・誤解は解消されないどころか、学ぶ権利や安全・健康に成長する権利が侵害されています。
政府は日本版DBS(※1)といった防犯対策や生命の安全教育、プレコンセプションケア(※2)などを推進していますが、こうしたことが本質的な解決になるとは到底思えません。
包括的性教育とは、総合的な人権教育であり、だれにとってもリスクのない「心が生きる」ための教育です。すべての子どもに性の学びを提供し、おとなも包括的性教育を知ること、そして、「包括的性教育推進法」を成立させることなどが重要だとチャイルドラインは考えています。どうして法律が必要なのか。それは義務教育の中で扱うことで、全国の学校で学べ、性教育格差をなくすことができるからです。
2つの団体は子どもたちからの声に寄り添い、子どもたちの学ぶ権利を保障するために活動を続けています。私たちも地域で、包括的性教育の必要性や推進を呼びかけていかなければと、思いを新たにした学習会でした。(会員:スエナガ)
(※1)日本版DBS…こども性暴力基本法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)。子どもの安全を確保し、性犯罪を防止する措置の一つとして、対象の事業者に対し、子どもに接する仕事に就く人について、性犯罪歴の確認を義務付ける制度のこと。対象の施設は学校や幼稚園・保育園、児童館など。初犯防止への限界など様々な問題点が挙げられています。
(※2)プレコンセプションケア…性や妊娠に関する正しい知識を身につけ健康管理を行うように促すこと。妊娠に備えた人生設計を促すことを狙いとしている点が、妊娠を既定路線としているのではという批判があります。
