PFOS・PFOAの汚染を知る学習会
2月24日、羽村市ゆとろぎ で開催された「PFOS・PFOAの汚染を知る学習会」(主催:横田基地周辺の水汚染を知る学習会実行委員会)に参加させていただき、長年PFOS・PFOAの汚染について研究されている京都大学名誉教授・小泉昭夫氏のお話を伺いました。
◆有機フッ素化合物による環境汚染
PFOS・PFOAは、絶対に自然にはできない人工的な物質である。
非常に安定した化合物であり、防水やコーティングに利用されていた。米軍で使われる泡消火剤の材料にもなっていて、燃えやすい航空機燃料に有効に対応できる。現在の消火剤にはPFOS・PFOAは含まれていないが、古い消火剤が処分されないまま残っている可能性はある。
安定した物質であることは、すなわち環境中に長く残留するということでもある。
残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(日本も加盟している)では、PFOSとPFOAは使用制限の対象物質として登録されている。日本でも特定の用途を除き製造・輸入・ 使用等が禁止されているが、水道水の残留基準はつくられていない。
◆有機フッ素化合物による健康影響
体内から排出されにくい物質である。
動物実験で、発がん性甲状腺機能障害、低体重児が疑われている。
大気中から呼吸により吸収する、飲料・食品から体内に入る。体内の残留は、血中濃度で測定できる。
◆過去をさかのぼると
歴史的に見ると、日本で最初に問題になったのが、京・阪・神で、ダイキン工業の排水が水道水に影響を与え、住民の血中濃度が高くなっていた。その後、企業努力により、PFOS・PFOAの使用を削減、中止していった。企業は問題となれば対応している。
小泉氏は1980年代から沖縄で、この問題に取り組んでいた。当時の住民の血中濃度を調べている。基地に近い宜野湾市では、沖縄の他の場所と比べ、血中濃度が高い。低体重児も多い傾向があった。
◆政府の取り組み
日本政府の対応として、2009年にストックホルム条約でこの物質が入った時に、厚生省で検討がなされているが、結局、基準はつくられなかった。
最近、沖縄では、水道水の濃度が高く、活性炭で除去して対応している。
玉城知事は厚労省に何度も働きかけた。沖縄以外でも水道水でも検出されることがあり、また海外でも目標値を設定する動きがあることから、厚労省では、暫定目標を設定しようとしている。
◆もっとしっかりと研究調査を
小泉氏の集めたデータや研究は民間でやっていることなので、規模も小さく確定することはできない。しかしこれだけの疑いがでているのだから、しっかりと調査研究をするべきである。民間ではそこまではできない。基準についてもアメリカに安易に準じているようだが、独自でしっかりとやってほしいとの思い。
◆参加者からの質問
虫歯予防にフッ素を歯に塗布したり、フッ素を添加された歯磨き剤があるが安全性は?
今問題としているのは有機フッ素化合物であり、虫歯予防に使う無機フッ素は別物である。
自分で身を守るには?
水道水の活性炭は有効であるが、どれだけの効果かははっきりはしていない。
含まれる食べ物は回遊魚や深海の魚が疑われるが、それほど心配するものではない。
PFOS・PFOAの濃度が高い井戸水を使ってそだてた農作物には、蓄積はない。
低体重児で生まれたても、この物質の影響が続くことはみられず、その後は問題なく育ってる。動物実験では高い濃度を使うが、現実ではもっと弱く、多くの人の中に少しだけ影響があるというものだ。
安全基準は?
小泉氏の考える、人が飲み続けても安全な基準として、1リットルあたり、10ナノグラム。
国が基準に考えているのは、50ナノグラムである。米国の勧告値は70ナノグラムで、飲料水としては高すぎる。
現在、水道水から、小泉氏の基準での検出はされていない。(報告 黒澤)