いのちを未来につなぐ、ふるさとの森づくり

 被災地での「森の防潮堤」で注目される潜在自然植生法(宮脇方式)の実践例が福生市やその近隣にもあるということで、見学に行ってきました。

 日本に古来からある自然のままの森林は、現在0.06%しか残っていないそうです。しかし、東日本大震災の大津波に耐えたのは、本来のその地方の植生である常緑広葉樹でした。また、自然のままの森林は、阪神淡路大震災での火災の広がりを食い止めました。

 その土地にあった自然の森林を取り戻そうと、植木屋さんの常識を破る方法で木を植える人たちがいます。宮脇昭氏(横浜国立大学名誉教授)が長年にわたり研究、提唱した植栽方法です。福生近隣にも実践例があります。NPO法人国際ふるさとの森づくり協会の高野義武さんに案内してもらいました。

圏央道 八王子美山

NPOふるさとの森づくり 高野義武さんと

 都立多摩工業高校では、2011年に国道16号拡幅工事で削られた敷地の際に「100年の森」をつくるとして、生徒と共に植栽を行いました。多種類のポット苗木を従来より狭い間隔で植え込むという宮脇方式の初期段階を見ることができます。国道には車がびゅんびゅん通るのに、間に木があると落ち着いた雰囲気ができます。学校は地域の避難所になっていますので、防災の面でも期待されます。

 

都立多摩工業高校 

都立多摩工業高校 宮脇方式の初期段階

 25年後の見事な森になっているのが、16号八王子方面滝山街道と交わるあたりです。自然が残っている場所と思っていたら、人が植えたと知り驚きでした。枝打ちなどの手をかけないということで、うっそうとした木々の間は別世界、タヌキでも住んでいそうです。生き物もはぐくむ森づくりです。同じ16号沿い瑞穂バイパスにも防音壁をはさんで植栽していますが、狭い敷地と思えないほど元気に木々が育っています。宮脇方式は、選定など極力行わない方がよく、数年後には雑草取りなども必要なく、維持管理費が安いというメリットがあります。

国道16号拝島 

25年前の植栽が森のようになりました

 東北の被災地では震災瓦礫を土台に、宮脇方式の「緑の防潮堤」をつくる試みが注目されています。