食と農を考える 都市農業と学校給食

「食と農を考えるフォーラム 2022 都市農業と学校給食」に参加して
生活クラブ東京・「食と農」政策委員主催 7月9日(土)オンライン開催

福生ネットは、学校給食に地場野菜を取り入れることを求めてきました。
市内小中学校10校の給食をつくる給食センター(防災食育センター・平成29年稼働)には泥付き野菜を受け入れられる設備が整えられました。しかし福生市内での野菜の供給量は少なく、近隣の市町村から調達することもあるそうです。

福生市のまちなかを歩くと、今まで畑だった場所に、建売住宅が建つのをよく目にするようになりました。緑地や畑のどんどん減ってしまうことに危機感を感じています。

基調講演での澤登先生のお話は、その危機感に具体的な問題点や展望を教えてくれるものでした。

また、日野市で農業を営む方から学校給食に地場野菜を取り入れ、食育もすすめる実践例を伺いました。
日野の給食はについて10年以上前に見学させていただきましたが、その後も着々と取り組み続けていたのを知り、素晴らしいと思いました。都市農業はそこに暮らす人々との連携がとても大切だと改めて思いました。
「まちかつしか」や「まち府中」の生活クラブ組合員の政策提言の取り組みも聞くことができました。

 

基調講演「都市農業の可能性」澤登早苗さんの講演より
澤登早苗さん:恵泉女学園大教授 教育農場長、有機果実農家、農林水産省農業政策研究所客員研究員、多摩市農業委員

◆学校給食と地産地消

農林水産省の第4次食育推進基本計画(2021年3月)では、学校給食の地場産利用が推進されています。有機農業などで持続可能なフードシステムズにつながるエシカル消費も推進しています。

有機農業推進政策の一環として有機農業の学校給食への利用拡大を推進する流れもあります。
やまなしの「有機給食プロジェクト」有機給食プロジェクト – 山梨県のやまなし有機農業連絡会議が立ち上げた有機給食プロジェクト (yayuren-organicbiz.com)、愛知、長野、フランスなどの取り組みを例や、市民運動でも広がりを見せています。

◆都市農業と都市農地をめぐる政策

都市農業を考えるとき、都市農地は重要な問題です。
今まで都市の農地は「宅地化すべきもの」でしたが、都市農業振興基本計画(2015年)以降「あるべきもの 残すべきもの」となったのは大転換でした。
事業者にとって農地活用が容易になりましたが、「農地は個人の資産である」という従来の考え方のままで、相続などの未解決の課題もあります。あくまで農業者による農業継続の支援であり、都市農地を守るという視点が弱いのが課題です。

◆都市農業の多様な機能

新鮮な野菜の供給、市民の農業体験や学習・交流の場、災害時の防災空間、良好な景観の形成、国土・環境の保全、都市市民へ農業への理解形成など都市農業には多様な機能があります。
このなかでも特に重視するのが、地産地消と農業体験農園の設置です。

◆都市農業と有機農業

有機農業なら安全・安心で環境負荷が少ない農産物を供給できます。
人と自然の関係が見え、生物多様性の保全されます。

しかし、有機栽培や自然栽培はまだ理解されず嫌がれれることもあります。
草をわざと生やして刈って肥料にしたり、耕さない農法を、畑を荒らしているとみなされることもあります。
有機農業がもつ公共性、多面的機能への理解が未熟なのが現状です。

澤登さんが取り組む「誰でも畑 子ども食堂」は、小さな子どもから高齢者まで自ら食べ物を作って食べるシステムづくりを目指して、多摩市の農家と恵泉女学園大学との協働で2017年にスタートしました。「有機農業体験は人が生きていく上の基礎の学びの場」で、食育だけでなく現代社会特有の問題解決の糸口にもなります。

◆都市農地を守る

澤登さんは農業委員として、農業と農地を守っていくことは、あくまでも農家に依存していると感じるそうです。
「農地は私有地=個人資産」で、農家から市民への働きかけが難しく、「都市農業には公共性がある」という視点が未熟です。
例えば、市民から「農家を表彰する制度」をつくり、農業を続けていることに感謝を示すのもいいとのことでした。

今、特定生産緑地への切り替え時期に来ています。世代が変わる時期で、このままでは農地の大幅な減少はまぬがれません。
市民参加型の新たな農地保全システムを作りたいが、農地法、税法上の壁があります。
駐車場などに転用されてしまった農地は、生き物は死んでしまうし、また農地に戻すことは困難です。

農業とは公的価値があるので、公的お金をいれてもよいのではないでしょうか?
公園整備に使っているお金と比べて考えてみるとどうでしょう。ただの補助ではなく、災害時の協定を結ぶなどへの対価として払うのもいいのではないでしょうか。

◆お話を伺って
地域住民へ有機農業を体験し、誰でも参加できる地域の交流の場ともなるような体験農園が福生にできるといいですね。
農業者の後継問題は簡単ではないと思いますが、農業の多面的機能についての周知や、市民の参画、食育などを実践していきながら都市農業の可能性を広げていくことに努力したいと思いました。

(福生ネット会員 黒澤)