子どもが世界一幸せな国オランダ

東京・生活者ネットワーク主催 
 「安心・共生・幸せ オランダ型成熟市民社会に学ぶ」
                       リヒテルズ直子さん講演会に参加して

リヒテルズ直子さん(左)と司会の都議・星ひろ子さん

比較教育・社会学を専門とするリヒテルズ直子さんは、オランダ人の夫と共にアジア・アフリカ、ラテンアメリカの国々で2人の子どもを育てながら暮らしました。15年前よりオランダに住み、オランダの社会教育事情を自主研究し、日本に発信しています。 1955年下関に生まれ福岡に育ち、九州大学大学院終了。 著書には「祖国よ、安心と幸せの国となれ」 尾木直樹氏と共著「いま「開国」の時、ニッポンの教育」など多数あります。
 
●親子が向き合う時間が持てる 
 2007年、ユニセフが公表した生活と福祉の総合的評価調査でオランダは「子どもが世界一幸せな国」とされました。その調査項目のひとつの「親に何でも相談する」でも、オランダが一位でした。その他の項目も10位以内です。
 子育て中は、子どもと向き合う時間を大切にしたい、そんな人生の場面に合わせた働き方が可能なのがオランダの社会です。
●同一価値労働・同一賃金
 1982年長引く不況を克服するために、政府、労働者、企業の3社が対等に話し合い短時間労働の正規就業化を実現しました。いわゆるワークシェアリングですが、パートタイムでも、正社員と同一の賃金がもらえるのです。
 それにより、子育て、介護、資格取得など人それぞれのライフサイクルに合わせた働き方が可能になり、それが精神的豊かさにつながりました
●学校を選ぶ自由の保障
 オランダの学校は私立、公立に関わらず無料です。私立は、カトリック系、プロテスタント系、非宗派自由
主義系など多様です。自分にあった学校が近くにないときは、国が通学費の援助をします。学校を選ぶ自由が実質的に保障されています。
 学校教育は日本から見ると驚くほどIT化され、知識習得はコンピュータのプログラムにより、ひとりひとりのペースで行うのが一般的です。幸福感だけでなく、学力も、PISA学力調査でEU域内で2位の成績だといいます。

 ●社会正義を守る市民を育てる
 では、IT化された学校で、先生は何を教えるのでしょう。
 例えば、2006年に初等中等教育に「民主的シチズンシップ教育」が義務化されました。自由のもとに自分で考え、社会は公正かなどを批判的に思考し、社会正義を守る市民を育てる教育です。授業にロールプレイを取り入れたりしています。

都議・西崎光子 リヒテルズ直子さん 大田ネット・奈須りえ 都議・山内れい子

●原発をとめたオランダ
 オランダは政府の原子力発電推進計画を、市民が反対運動により阻止させたという歴史を持ちます。市民が意見をいい、それを政府が受け止める「成熟した市民社会」が形成されています。その背景には教育や、市民が社会貢献しやすい労働形態があるのです。

●安心幸せの国となるよう願って
 リヒテルズさんは、「今の日本は後ろへ後ろへと進んでいるように見える」と危機感を持っていました。現在進行形の原発事故を抱えながら、相変わらず古い価値観の経済第一主義、教育現場はまだまだ管理主義です。
 しかしまた、リヒテルズさんは、各地で起こっている原発反対の運動は、これからの新しい市民社会をつくっていく兆しとも受け取っていました。幸せ、安心な社会のために、民主的市民社会をつくっていくことが必要です。       (講演日 4月12日)