世田谷区のグリーンインフラの取組を見学
福生ネットは、「福祉やグリーンインフラの視点で災害に備える」を政策の柱のひとつに掲げています。グリーンインフラとは、「緑」を意味する「Green」と社会基盤施設を意味する「Infrastructure」を合わせた言葉で、自然環境が有する機能を社会のさまざまな課題解決に活用しようとする考え方です。気候変動などへの環境対策や防災・減災、地域振興を併せ持続可能な社会形成を目指します。
今回、活動の一環として、10月22日に、世田谷区のシモキタ雨庭広場と世田谷区のグリーンインフラを取り入れた施設の見学に行きました。


●シモキタ雨庭広場
シモキタ雨庭広場は、もともと小田急電鉄の線路があった土地に整備された広場です。ここに、周囲に降った雨水を集めて地下に貯留・浸透させるくぼ地状の植栽地である雨庭(あめにわ・レインガーデン)があります。
下北沢駅を降りて徒歩2分、シモキタ雨庭広場は周りを坂で囲まれたすり鉢状の地形にあります。この地域の地名(北沢、代沢)に「沢」とあるように、水が溜まりやすい地形となっています。くぼ地の地下部には、雨水が地下に浸透・貯留しやすいよう砕石層(浸透基盤)を設け、一定レベルの水位を超えた水はオーバーフローますから排水します。
アスファルトの多い都市部では、雨水が地中に浸み込むことなく、大雨が降った場合道路にあふれてしまうことがありますが、雨庭はそれを抑制する働きがあるということです。また様々な種類の草木がありましたが、豊かな植栽により、良好な景観形成や生物多様性の保全、ヒートアイランド現象を緩和する効果も期待されているそうです。くぼ地の中には大きな石が飛び石状に配置されているので、雨水が溜まった時の景観もぜひ見てみたいと思いました。

●区立保健医療福祉総合プラザ(うめとぴあ)
次に向かったのは小田急線梅ヶ丘駅そばの「うめとぴあ」という、世田谷全区を担う保健医療福祉施設です。自然エネルギーの利用をはじめ、地球環境に配慮した取組みを積極的に行っています。建物を段丘上の構造として、豪雨時に下水道に流れ込む雨水の量を抑えます。また雨水がゆっくり流れ落ちるようにすることで、雨水流出抑制効果を高める保水性竪樋(じゃかご樋)などを整備しています。建物の各階のテラスにはたくさんの植物が植えられていました。建物の裏手にはレインガーデンもあり、施設全体がグリーンインフラとして機能するようになっていました。

↑建物の横にひっそりと雨庭がありました。


●北沢タウンホール5F 屋上庭園
北沢タウンホールの屋上庭園も見学しました。5階にはビオトープと広場があり、池の中には小さな生き物たちが棲んでいました。世田谷区では、みどりの基本条例に基づき、公共施設の緑化を推進しています。屋上に緑があることで、生き物の移動経路ともなるそうです。屋上緑化は限られた敷地内で効果的に緑化ができ、室内の冷暖房の効率化やヒートアイランド対策も期待されています。
世田谷区は、グリーンインフラを「『自然が持つ様々な機能を積極的かつ有効に活用することで、安全で快適な都市の環境を守り、街の魅力を高める社会基盤や考え方のこと。』と捉え、『世田谷区みどりの基本計画』、『世田谷区豪雨対策行動計画』や『世田谷区環境基本計画』などに盛り込み、みどりの保全や豪雨対策を推進しています。」と世田谷区のHPで紹介しています。
今回見学をしてみて感じたことは、区全域で意識を持ち行動しているだけでなく、市民に向け積極的な取組みを呼びかけている点がよいと感じました。自宅での雨庭づくりを推進するなど、区民一人ひとりが主体的にグリーンインフラに取り組むことを重要だと位置付けています。確かに周辺を歩いていても、家の敷地内のちょっとしたスペースにも緑を取り入れている家が多いように感じました。
コンクリートやアスファルトで固めてしまうのではなく、土や緑の力を借り、市民が減災や防災の意識を高めていけたらいいのではないかと感じた見学でした。(スエナガ)
