まるで戦前に逆戻り! 自民党改憲案を知る

右:金子匡良さん 左:大河原まさこさん

右:金子匡良さん 左:大河原まさこさん 

 

 

憲法学者・金子匡良さん講演&トークセッション「自民党憲法改正草案の正体を見据える!」に参加しました。

金子さんより2012年に出された自民党の憲法改正草案の主要の条文の解説を聞きました。9条を変え国防軍を持つだけではありません。国民を国家に従わせようとするような、戦前に逆戻りしたような内容に驚きと危機感を感じました。

憲法とは国家権力の暴走を制限するためにある

憲法は、国民の義務を定めたものではありません。

国家権力者の権力を制限するためのもので、これが立憲主義です。

憲法とがなかったころの国家 (王様、将軍、戦前の日本帝国)
しばしば国家権力が乱用されていた。

国家権力者が権力を乱用しないように憲法で制限をかけた。

国家権力が国民に強いた太平洋戦争の悲惨な歴史を経て、現行憲法は生まれました。

でも、違反に罰則はありません。

憲法を有効なものにするためには、国民は、憲法に支配されようとしない権力者を排除しようとする意志と行動が必要です。

個人主義は憲法の一番重要なところ

<現行憲法 第13条>
すべて国民は、個人として尊重される…
<自民党憲法案 第13条 >
すべて国民は、人として尊重される…

「個」がぬけています。

現行憲法は「個人」とすることで多様な価値観をもつ一人ひとりの「個人」を尊重していました。それが自民党案では、生物としての「人」は尊重するが、一人ひとりの自由や人生、価値観まで保証するとはいいません。

個人主義原理は、悲惨な太平洋戦の原因の一つであった、全体主義あるいは天皇中心主義を深刻に反省したものです。すべての価値は個人から始まるとしました。

集会や表現の自由に対する規制強化

<現行憲法 第21条>
①  集会・結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保証する。
<自民党憲法案 第21条 >
① は同じ
② 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない。

「公益及び公の秩序を害する」とは誰が判断するのでしょうか?時の権力者によって、いかようにも表現の自由を規制することができます。

反原発運動など、権力者の都合の悪いことは、秩序を害すると規制されるかもしれません。

国民に憲法を守れというが・・・

<現行憲法 第99条>
天皇又は摂生及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。
<自民党憲法案 第21条 >
① 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
② 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。

立憲主義は、権力を制限するものなので、現行憲法には、国民に守れとはいっていません。

自民党は、安保法制は違憲だとあれだけ言われながら無視して、自分に都合のいい憲法をつくったとたんに国民に「守れ!」ということですね。

家族による相互扶助義務の強化

第24条で、現行憲法は、婚姻は両性の合意と平等、個人を尊重することが書いてあります。自民党案では、現行憲法の前に次のように付け足しています。

「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない」

憲法にわざわざ家族のことを書く必要があるのでしょうか?

戦前の家族像を感じます。また、福祉サービスを家族内でなんとかしろといいたいのでしょうか?

緊急事態に名を借りた権力乱用

新しく増やした条文で、緊急事態の宣言により権力を国家に集中させることができるようになります。緊急事態として、武力攻撃、大規模自然災害があげられていますが、その他に「内乱等による社会秩序の混乱」などもあります。

改憲を簡単にしようとする第96条の変更 

9条に付け足して、自衛権を認めさせ、国防軍を保持すると明記

金子さんは、最後に、私たち自身が今まで立憲主義を意識し、憲法を語り生かしてきたかを問いかけました。

ほとんどの憲法学者から違憲といわれた安保法制で、立憲主義や憲法が注目されるようになりました。私たちの憲法を知り、どんな国をつくっていきたいか、これから話し合っていかなければと思いました。1461324453580

大河原まさこさんと金子さんによるトークセッションでは、改憲案に対する危機感が語られました。

大河原さんは改憲案で、人の多様性を認めないことの危うさを指摘していました。基本的人権が破壊されようとしています。自由で、排除されない共生の社会こそが、この国を強くします。

平和憲法をもって、平和を発信し続けていく。戦争という悲惨な体験を無にしてはいけない。「一票で変えられることを実証したい」と大河原さんは、強い決意を語っていました。                   (黒沢)

(2016年4月11日「自民党憲法改正草案の正体を見据える!」にて )